Shure SM7B 偽物の見分け方を解説!正規品と偽造品を実際に購入して比較検証
ダイナミックマイクの代表格である「Shure SM7B」は、偽造品が数多く出回っています。
先日、機材変更のために正規販売店から SM7B を購入し、せっかくなので偽造品も海外サイトで実際に購入して、どこが違うのか比較検証してみました。
フリマアプリなどで購入するさい、偽物の見分け方の参考にしていただけると幸いです。
偽造品をつかまされないために、公式ストアまたは正規代理店からの購入をおすすめします。
パッケージの比較
下の写真は、梱包を解いた直後の状態です。
正規品は島村楽器で購入したもので、ダンボールで丁寧に梱包されていました。偽造品は AliExpress で購入したもので、緩衝材もないビニール袋の梱包です(中華製品あるある)。
梱包を解くと、正規品のほうは外箱のみ。偽造品は透明なビニールあり。これは販売店によって違うかもしれません。
外箱(天面)
ビニール袋を外して天面を比較してみます。
こうして比較するとよくわかりますが、偽造品は印刷の品質が低いですね。黒がしっかり出ていません。
また、ビニール袋で輸送されてきたので、角がダメージを受けてつぶれています。
偽造品の特徴(外箱天面)
- 印刷品質が低い
- 箱の角がつぶれている
- 左上のロゴが大きく、登録商標を表す R マークが付けられている
- 左下の「SM7B」のフォント(カーニング)がやや異なる
- パッケージ下部のテキストが異なる
- センターのラインがグリーン
正規品も偽造品もパッケージの種類がいくつかあるようなので、ロゴやテキストの違いだけでは判別できないかもしれません。
明らかに印刷品質が低く、新品なのに角がつぶれているなら偽造品を疑ってよいと思います。
外箱(側面)
側面は印刷内容が違っていました。
正規品でロゴが入っている側は、偽造品は何も印刷されていません。偽造品はダメージもひどいですね。
反対側はテキストの文面・配置がやや異なるようです。
よく見ると、偽造品は「マイクロホン」が「マイクロホソ」になっていました。
「ナレーション」も「ナレーショホソ」ですね。
コピー品としても B 級だと思います(偽造品を作っているところはたくさんあります)。
外箱(底面)
底面のデザインはまったく異なるものでした。
もしかすると、偽造品と同じレイアウトの正規品があるのかもしれません。
側面や底面のデザインは使い回しで、天面の目立つ部分だけ新パッケージに合わせて変更している気がします。
内箱(天面・ロゴ)
内箱を取り出してみると、ロゴのサイズが明らかに違いました。R マークの比率も異なります。
内箱 ロゴのサイズ(※ R マークを含めた実測値)
- 正規品:横 11 cm
- 偽造品:横 14.2 cm
外箱天面のロゴもそうですが、偽造品は「Shure」を強調したいのかもしれません。
偽造品の箱は不自然に漂白されていて、端のカットがギザギザ。
正規品も内箱のパッケージ素材・デザインを変更している可能性がありますので、これだけでは判別しづらいところですね。
内箱(シリアルナンバー)
内箱の側面にはどちらもシリアルナンバーがあります。
偽造品のナンバーは適当に付けられているものだと思いますので、シリアルナンバーがあるから大丈夫、というわけではありません。
正規品は Shure の住所が内箱に直接印刷されていますが、偽造品はシールになっていました。
なお、正規品が「Made in China」で偽造品は「Made in Mexico」となっており、一見すると正規品のほうがニセモノかと思ってしまいますが、正規品は中国とメキシコで製造されています。
偽造品はメキシコ製と偽った中国製だと思いますが、どうなんでしょう。
内箱開封
内箱のふたを開けると、正規品は紙の緩衝材だったのに対し、偽造品は発泡スチロールでした。
正規品にも発泡スチロールバージョンがあるかもしれません。
偽造品は全体的にギザギザのカットで、安っぽく見えますね。
同梱物の比較
同梱物はほぼ同じでしたが、偽造品には小さいベルクロが入っていませんでした(上段右から 2 つ目のパーツ)。
偽造品の付属品は、いずれもチャック付きの袋に入っているのが特徴です。
取扱説明書と保証書は、正規品のほうがシンプル。偽造品は「いかにも正規品」という雰囲気を醸し出しています。
偽造品のマニュアルや保証書は、昔の正規品をコピーしているのかもしれません。
ステッカー
ステッカーのサイズは同じでした。
しかし、偽造品のほうが品質は低く、色味も若干違います。よく見ると一部欠けており、外箱と同じく印刷が雑ですね。
ステッカーの裏面を見ると、正規品が白、偽造品は黒でした。
近接用ウィンドスクリーン(丸形)
付属の近接用ウィンドスクリーンは、まずパッケージに違いがあります。
他の付属品もそうですが、偽造品はチャック付きの袋を使っているんですよね。
取り出して比べてみると、偽造品のほうがやや縦長でした。
ウィンドスクリーンそのものの性能は、素人にはわからないレベルの差だと思います(少なくとも私の耳ではわかりません)。
ケーブルタイ
正規品のケーブルタイは袋に入っていませんでしたが、偽造品は 5/8 変換アダプターと同じ袋に入っていました。この袋もチャック付きです。
ケーブルタイに印刷されているロゴは、正規品のほうがきれいな白で、偽造品はややグレーな色味でした。
最大の違いはベルクロ部分。正規品は一部縫合されているので分割できませんが、偽造品はベルクロのみで留められているためバラバラにできます。
随所に気が配られているのは、さすが正規品。
5/8 変換アダプター
先ほどの写真でわかるとおり、正規品の変換アダプターは密封された袋に入っています。
そして、材質が違うようで、実際に触ってみると明らかな違和感があります。
正規品は真鍮製ですが、偽造品はプラスチックを金色に塗装しているだけかもしれません。
重量は 2 倍の差がありました。
SM7B の本体はかなり重いので、偽造品の変換アダプターだとすぐに割れる気がします。
スイッチカバープレート
スイッチカバープレートは、偽造品を見抜くポイントが複数あります。
まず、正規品は袋が密封されており、偽造品はチャック付きの袋であるところ。
そして、ネジ穴。正規品はザグリがあり、その部分は塗装されていません。偽造品にザグリはなく、穴の内側も塗装されています。
- ザグリ
-
ネジの頭に合わせて加工した孔のこと。
また、正規品のプレート側面も塗装がなく、偽造品は真っ黒(後述するバックプレートも同じ)。
正規品は、摩擦で削れそうなところはあらかじめ塗装していないのだと思います。やはり偽造品は細かい部分が雑ですね。
なお、ロゴの R マークは、正規品でも「あり」「なし」の 2 パターンあるようです。
本体の比較
マイク本体は、パッと見て大きな違いはありません。
今回購入した偽造品は、吊り下げると下側になる部分にロゴが入っていませんが、正規品も偽造品も印刷の有無が数パターンあるようです。
もう一方には同じ位置にロゴがありましたが、偽造品の文字は白ではなくグレーでした。解像度の粗さから見て、スキャンデータだと思います。
さらに細かい部分で比較していきましょう。
本体重量
ウィンドスクリーンを外した状態で、本体重量は 40g の差がありました。
内部パーツの差だと思いますが、もしかすると筐体の素材も違うのかもしれません。
いろいろ調べても偽造品のほうが 100 % 軽かったので、コスト削減の結果なのだと思います。
ウィンドスクリーン(縦長型)
本体にあらかじめ取り付けられている偽造品のウィンドスクリーンは、ややいびつな形をしていました。
(※ 写真の撮り方が下手なので、さらに湾曲して写っています…)
先ほどの丸形ウィンドスクリーンと同じく、サイズは偽造品のほうがやや長め。
また、本体に取り付けるさい、正規品は「パチッ」という感触でハマりますが、偽造品は「ヌルッ」という感触でした。下部のプラスチック部分の設計が甘いのかもしれません。
本体グロメット
ケーブルを保護するグロメットは、正規品だと指でつまんでも簡単に外れないほどきっちりハマっています。
対して、偽造品は簡単に外れますし、デフォルトでやや浮いている状態。
もう一方のグロメットも同じです。
明らかにわかるレベルで浮いていたら、偽造品の可能性大ですね。
ダイアフラム
ウィンドスクリーンを外して、金属パーツに保護されたダイアフラムを見ると、正規品はアタマの部分に二次元コードが貼られていました。
比べるとサイズの違いも明らかです。
偽造品のほうがワイドになっていて、収音にかなり影響しそうですね。
偽造品によっては、幅は同じで高さが違うものもあるようです。
バックプレート
本体背面のバックプレートは、ロゴの色味と切り替えスイッチ部分の塗装に違いがあります。
正規品は白くきれい。偽造品はややグレーで塗装が粗くなっています。
R マークの有無は、正規品でも両バージョンあるようなので、塗装の品質で見分けましょう。
プレートを外すと、さらに違いがわかります。
付属品のスイッチカバープレートと同じく、正規品はザグリがあり、摩擦で削れそうな部分は塗装されていません。
手に取ってみると、偽造品は素材の質感が安っぽく、写真でわかるとおり若干ゆがんでいます。
切り替えスイッチ
バックプレートを外すと、切り替えスイッチの台座の素材が明らかに違います。
また、正規品はマイナスネジ、偽造品はプラスネジでした。
内部配線
付属品や細かいパーツの比較で偽造品をある程度見抜くことはできると思いますが、確実に判定したいなら内部配線をチェックしてください。
正規品は「黒・黒・黄・緑」の配線で、取扱説明書の内部配線図にも明記されています。
偽造品の配線は「赤・黒・赤・黄」となっており、線の太さも違いました。はんだ付けも甘いです。
音声テスト
SM7B 正規品と偽造品の音声テストをしてみました。
テスト環境
- オーディオインターフェース:PreSonus Revelator io24
- ゲイン 60dB / DSP 処理なし
- インラインプリアンプなし
- SM7B の設定はノーマル
- VOICEVOX でナレーションを作成してスピーカーで再生
- OBS で録音(フィルターは RNNoise のみ使用)
VOICEVOX:ずんだもん / VOICEVOX:青山龍星
スピーカーを通しての音声ということを考慮しても、偽造品の品質はかなり悪いですね。とくに SM7B の特徴である、豊かで明瞭感のある低音は再現できていません。
なお、スピーカーのボリュームをそろえると音割れがひどく、偽造品の録音はボリュームを下げました(オーディオインターフェースのゲインはそのまま)。
ダイアフラムの大きさが感度に影響しているのだと思いますし、本体内部の素材やコイルなどの品質も低いのでしょう。
「形はそっくりだけど中身はまったくの別もの」ということですね。5,000 円前後のマイクと同じぐらいの品質じゃないでしょうか。
正規品を入手する方法
ネットで SM7B を購入する場合、確実に正規品を入手したいなら以下のいずれかのストアで購入しましょう。
- Shure 公式ストア(楽天)
- Amazon(販売元が Amazon または正規代理店)
- 正規販売店の EC サイト
2025 年 1 月現在、正規品の販売価格は 45,000 ~ 65,000 円ほど。セールやポイント還元を駆使しても、39,000 円台が最安値だと思います。
新品なのに、これをはるかに下回る 10,000 ~ 30,000 円の商品は、まず間違いなく偽造品です。
イチかバチかで買うような製品ではないので、価格につられてニセモノをつかまされないようご注意ください。
低価格で偽造品を買うなら、MV7 を買ったほうが幸せになれます。
さらに低価格帯の FIFINE K688 もいいですね。
SM7B のニセモノより品質が高く、初心者にも扱いやすいマイクだと思います。
偽造品を見抜くコツ
公式ストアや正規代理店で購入すれば間違いありませんが、中古でもいいからどうしても安く買いたい、ということであれば商品写真から判断するしかありません。
たとえば、以下は某フリマアプリで出品されている画像です。
以下の部分で偽造品の疑いがあります。
- 外箱の角がつぶれている
- 付属品がチャック付きの袋に入っている
- カバープレートにザグリがない
今回検証した偽造品とほぼ同じですね。
このほかに、商品説明・出品者への質問・過去の出品情報と照らし合わせて判断してください。以下に該当する場合は偽造品の可能性があります。
- どこで購入したか公開されていない(Amazon にも偽造品があるので要注意)
- 過去に同じ商品を何度も出品している(画像も使い回し)
- 付属品の写真を公開していない
- 並行輸入品のため外箱が損傷している、などの記載がある
正規の新品であれば外箱の損傷はまず考えられませんし、どの国で購入しても価格はほぼ同じです。
なお、アリエクで購入した SM7B の偽造品は 8,687 円でした。このほかに 7,000 ~ 20,000 円ほどで複数販売されています。
販売停止を避けるためか、説明や写真には「Shure」と書かれていません。
これをフリマアプリや Amazon マーケットプレイスで 20,000 ~ 30,000 円で売って利益を得ていると思われます。
たぶん正規品だろうという出品もたまに見かけますが、賭けになってくるのであまりおすすめしません。
少しでも安く手に入れたいなら、正規代理店が販売している中古品を購入してください(イシバシ楽器 17Shops など)。保証が付いていることも多いので、なおのこと安心です。
まとめ
「Shure SM7B」のほかに「SM7dB」や「SM58」なども偽造品が多数出回っており、マイクだけではなくイヤホンもニセモノがたくさんあります。
本当に良いものはそれに見合った価格になっていますから、安物買いの銭失いにならないよう注意しましょう。