検索サイトからのアクセス数を伸ばすための施策「SEO(検索エンジン最適化)」を調べると、様々なノウハウが出てきます。
残念ながらそのノウハウがすべて正しいとはかぎりません。いろいろ試してみるのはよいことですが、明らかに効果がないものに時間を使うのはもったいないと思いませんか?
ブログ運営においてはまったく必要のない / 気にしなくてよいノウハウがたくさんあります。本記事では、もはや都市伝説にもなっている SEO のあれこれを紹介していきます。
SEO 都市伝説 10 選
本記事で取り上げる「SEO 都市伝説」は、次のようなものがあります。
- 検証なしに憶測で語られているもの
- ごくわずかな量・時間で検証されたもの
- 伝言ゲームで本来の意味から大きく外れて解釈されているもの
- 過去に効果はあったが現在は意味のないもの
- 検索順位への影響が微々たるもの
- ただの願望や希望的観測
具体的に見ていきましょう。
01. 滞在時間を伸ばすと検索順位が上がる
滞在時間が検索評価(順位)に大きく影響すると考えている人はたくさんいます。各サイトの滞在時間を Google アナリティクスのデータで判断している、と思っている人もいるほど。
でも、次の点は覚えておきたいところです。
- Google はすべての Web サイトの状況を把握しているわけではない
- 検索順位は単純な指標だけでは決まらない
たとえば、X(Twitter) や Bing からどのくらいアクセスがあってそのページに何秒とどまっていたか、という情報は Google にはわかりません。
仮に Google がアナリティクスや Chrome のデータを見ているとしましょう。では、Adobe Analytics を使っているサイトに Firefox でアクセスしたユーザーのデータはどうするのか、という疑問が生まれます。
別の角度から考えると、ただ滞在時間を伸ばすだけで順位が上がるなら、こんなに楽なことはありません。だれかにお金を払ってブログを開きっぱなしにしてもらえば、簡単に攻略できてしまいます。
滞在時間が長いということは、それだけユーザーの関心が高いコンテンツかもしれません。でも、それだけで善し悪しを判断することはできませんし、簡単にコントロールできる指標で検索評価が決まるならスパムで検索上位をとれてしまいます。
滞在時間だけ伸ばしても何の効果もないので、他の指標と合わせて総合的に考えましょう。
02. 直帰率が高いと検索順位に悪影響を及ぼす
滞在時間と同じく、直帰率や離脱率もよく誤解される指標です。
すでにお話したとおり、Google はすべてのサイトのあらゆるデータを入手できるわけではありません。ブログ全体や各ページの直帰率がどうなっているか、知りようがないのです。
唯一チェックできるのは、Google 検索を起点としたユーザー行動です。「検索結果 → ブログ記事 → 検索結果」という動きですね。
それでも、ブログ内でユーザーがどのような行動をしたかまではわかりません。30 秒で検索結果に戻ったとしても、記事をじっくり読んだのか(スクロールしたのか)、一部分を表示したまま他のサイトと見比べていたのか、いろいろな動きがあります。
そもそも、検索結果にすぐ戻ったから低品質だと結論づけるのは不可能です。ユーザーがあなたの記事を読んだだけで満足いく答えを得られたのなら、間違いなく高品質コンテツといえます。それなのに、直帰したという理由だけで検索順位が下がったらどうですか?
滞在時間や直帰率といったアナリティクスのデータをランキングに使用していないことは、Google がたびたび明言しています。
検索結果ページを起点としたデータは、アルゴリズムの評価や機械学習に用いられているかもしれません。でも、個々のページの検索順位を決める要素ではないので、直帰率を下げるだけの施策など気にする必要はないのです。
これは本当に無いはず。非常にアクセス数が多いサイトが別の解析ツールからGAに変更しても全く順位に変更なし、という事例を何度も見てます。 https://t.co/JKHaaLqsNr
— 辻正浩 | Masahiro Tsuji (@tsuj) January 29, 2016
03. 外部サイトへのリンクが多いと検索評価が下がる
リンクは、検索順位決定において大きな指標となっています。自作自演でもスパムリンクでも、被リンク数が多ければ検索上位を狙えた時代もあったほど。
しかし、度重なるアップデートでリンク以外の指標も重視されるようになってきました。医療系分野において、被リンクが何百もある個人ブログが被リンクゼロの企業サイトに勝てなくなった、というのがわかりやすい例だと思います。
Google 検索の観点では、リンクによって PageRank が転送されます。ページ A からページ B にリンクすると、リンクのパワーが送られる、ということです(リンクジュースとも呼ばれる)。
これに基づいて、「リンクパワーを外部に流さず、自分のサイト内で蓄えたほうが検索評価が上がる」という考え方が広まりました。
この古い考え方が今でも通用すると信じ、できるだけ外部リンクしないサイトもいまだ見かけます。でも、外部リンクがあるから検索評価が下がる、という事例は現在確認できていません。外部リンクを外したから検索順位が上がった、という事例もありません(※ リンク先がスパムサイトだと影響します)。
それがユーザーのためになるページであれば、リンクするのは自然なことです。検索評価に関わるものではないので、必要なリンクはきちんと入れましょう。自分のことだけ考えているサイトが被リンクを得られるはずもないですしね。
04. ドメインパワーを上げる施策が必要
「ドメインパワー」にはいろいろな定義があります。X(Twitter) などでこの話題が上がるときは、Google 以外の第三者が測定しているドメインスコアを指していることが多いと思います。
先に紹介した Google の PageRank とはまったく違うもので、ドメインスコアを上げたから検索上位に入りやすいということはありません。マイナスのスコア(スパムスコア)も同様です。
ドメパ 70 のサイトの真実。
— 瀬尾@Reinx (@ReinxWeb) September 14, 2023
大量の低品質リンクつけてスコアを上げても、検索流入が少なかったら(=実際の検索評価が低かったら)意味ないと思いますよ。 pic.twitter.com/mlabbeKp6F
その測定サービスの仕様によりますが、基本的に被リンクをたくさん集めればスコアは上がります。その被リンクが、検索順位に何の影響も及ぼさない自作自演リンクや、Google をあざむくようなスパムリンクであっても、です。
ドメインスコアを上げるだけの施策に力を入れるなら、1 つでも多く高品質な記事を公開したほうがよほど効果的なのは間違いありません。
05. サイトマップは必須
検索順位を上げるために、または Google AdSense 審査に通過するために「HTML サイトマップ」が必須だと考えている人がいます。実際のところ、とくに必要ないものです。
100 ~ 1,000 記事ほどのブログにサイトマップページを追加する / 削除する、という実験を何度も行いましたが、検索順位に影響することはありませんでした。サイトマップページがないブログが AdSense 審査に通過するのも何度も確認しています。
ユーザビリティを考えてサイトマップページを用意するのは良いことですが、何百記事ものリンクが 1 ページに集約されているだけでは利便性が高いとは言えませんよね。ユーザーにとって本当に必要だと思うなら設置しましょう。
HTML サイトマップを生成できる WordPress プラグイン
もう 1 つのサイトマップ、「XML サイトマップ」はどうでしょうか。検索エンジンはページ発見のヒントとして見ていますが、検索評価には使っていません。当然ながら Google AdSense 審査にも無関係です。
何万ページもある巨大サイトなら別ですが、数百記事ぐらいの個人ブログなら XML サイトマップがなくてもかまいません。
次の場合は、サイトマップが必要ない可能性があります。
サイトマップ(sitemap.xml など)の概要 | Google 検索セントラル
- サイトのサイズが「小さい」。サイトのページ数がおよそ 500 ページ以下の場合にサイズが小さいと考えます。検索結果に表示する必要のあるページのみをこの合計ページ数に加算します。
XML サイトマップがなくても、クローラーはリンクをたどってページを検知してくれます。
ちなみに、WordPress であれば、プラグインを入れなくても本体が自動的に XML サイトマップを生成しています。
「クロール・インデックス登録・ランキング」という検索の仕組みを混同していると、誤解が生じやすくなります。技術的な SEO に興味があるなら、基礎部分をしっかり学んでおきましょう。
06. 重複コンテンツがあるとペナルティになる
「重複コンテンツ」にはいくつか種類があります。
- 自分のブログ内にほぼ同じ内容の記事がある
- 知らないうちに同じページができている
- 意図せず他サイトの記事とほぼ同じ内容になっている
- 他サイトの記事を参考に書いた(≒ 盗用した)
このうち、明確にスパムと定義されているのは 4 番目のコピーコンテンツで、自動または手動ペナルティの対象となり得ます。
他のサイトのコンテンツをコピーし、(語句を類義語に置き換えたり自動化された手法を使用したりして)若干の修正を加えたうえで転載しているサイト
Google ウェブ検索のスパムに関するポリシー | Google 検索セントラル
1 ~ 3 番目に関しては、検索上位に出てこない可能性が高くなるものの、ペナルティではありません。
記事 A と記事 B で、内容が一部重複しているようなケースなら気にしなくても大丈夫です。重複の度合いにもよりますが、少なくともペナルティになることはないですよ。
なお、「記事の内容は違うが、キーワードが被る」というケースもあります。このとき、ページの内容によっては同じブログから 2 つの記事が検索結果に表示されます。
基本的に、同じブログ(ドメイン)から表示されるのは 2 ページまで。キーワードが重複している記事が複数あるなら、統合を検討したほうがよいかもしれません。
07. コピー率が高いと検索評価が下がる
CopyContentDetector などのツールで他サイトとの類似度をチェックし、コピー率が下がるように調整しているブロガーをたまに見かけます。
普通に記事を書いていてたまたま類似する文章があったなら、とくに気にすることはありません。
もし「検索上位のサイトを見ながら記事を書く」ようなことをしているなら、コピー率をチェックする以前の問題です。それは記事を盗用しているだけで、前項で解説したとおり Google 検索においてはスパムとみなされます(さらに言えば、著作権侵害です)。
上位サイトの本質的な部分を参考にするのはよいことですが、表面的な真似や模倣になっているなら考え方を改めたほうがよいでしょう。
検索上位ブログを「真似する」と「パクる」は何が違う?正しい競合分析方法
08. ブログ記事は最低 3,000 文字必要
文字数に関する疑問を抱くブロガーはたくさんいます。
「検索上位に入るためには 3,000 文字必要」など断言している人もいますが、そこに明確な根拠はありません。「相関関係」と「因果関係」をはき違えているのだと思います。
ブログ記事の最適な文字数は?長文コンテンツと検索順位の関係性
Google の ガイドラインにも、文字数について次のように明記されています。
Google が優先する文字数があるとどこかで聞いたか読んだかしたために、特定の文字数になるように記事を書いていますか(そのような設定は存在しません)。
有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成 | Google 検索セントラル
検索流入を伸ばしたいなら、検索ユーザーは何を求めているか、しっかり考えましょう。その答えに必要な量が文字数となって表れます。ユーザーが満足するならたとえ 1,000 文字でも問題ありません。
本来 1,000 文字で必要十分なところ、無理やり 3,000 文字に引き伸ばしたら、内容の薄い記事になるだけですからね。
09. 個人ブログが優遇されるようになる
Google のアルゴリズムアップデートにより、一部ジャンルでは個人ブログがまったく上位に表示されなくなりました。
医療・健康分野はとくにその傾向が強く、今後も様々なジャンルで信頼性や権威性が重要視されるでしょう。Google 検索においては「E-E-A-T」という言葉が使われています。
- E:Experience(経験)
- E:Expertise(専門性)
- A:Authoritativeness(権威性)
- T:Trustworthiness(信頼性)
昔に比べると個人ブログが冷遇されているかのように感じ、「また個人ブログが優遇されるようになる」と言っている人もいますが、残念ながら根拠のない願望にすぎません。
「個人ブログかどうか」をチェックして検索順位を決定しているわけではないですし、個人ブログのために検索サイトがあるわけでもありません。仮に個人ブログが有利になるとしたら、企業は個人ブログに見せかけたサイトを作るだけですから。
楽観視せず、どうすれば信頼されるか、という視点でブログを作り上げていきましょう。
10. 公開されていない秘密のノウハウがある
「検索上位に入るために、何か秘密のノウハウがあるのでは」と考える人はたくさんいます。
最近ではドメイン貸しやそれに関わるノウハウもありますが、個人ブログにはまったく関係のない話。参考にしたくてもできる分野ではないですよね。
SEO 都市伝説にまつわる話は、ほとんどが「〇〇をするだけで効果が出る」というもの。繰り返しお話しているとおり、そんな単純な指標で検索順位は決まりません。いろいろな指標が複雑に絡んでいて、その指標も定期的にアップデートされています。
だれでも考えつく簡単な施策で順位が上がることはない、ということです。まずは SEO スターターガイドを参考に、ブログの土台を固めましょう。そこから少しずつ勉強して、やれることを地道にこなしていくのが最良の手です。
SEO 都市伝説に関するまとめ
本記事で紹介した SEO 都市伝説は以下の 10 個。
- 滞在時間を伸ばすと検索順位が上がる
- 直帰率が高いと検索順位に悪影響を及ぼす
- 外部サイトへのリンクが多いと検索評価が下がる
- ドメインパワーを上げる施策が必要
- サイトマップは必須
- 重複コンテンツがあるとペナルティになる
- コピー率が高いと検索評価が下がる
- ブログ記事は最低 3,000 文字必要
- 個人ブログが優遇されるようになる
- 公開されていない秘密のノウハウがある
やってみなければわからないことはたくさんありますし、タイミングによってたまたま上手くいくこともあります。
気になるものがあればどんどん試してほしいところですが、だれかが言っていたことを何も考えず実行することだけは避けましょう。
今後、検索上位に入るためだけの施策はますます通用しなくなっていきます。検索サイトを見るのではなく、ユーザーを第一に考えて記事を書いてくださいね。