「WordPress は SEO に強い」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
そのきっかけとなったのは、Google の Matt Cutts 氏のプレゼンテーションです(WordCamp San Francisco 2009)。
プレゼンから15 年たった今でも SEO に強いのは変わらないのか、そもそも WordPress を使うだけで検索上位に入りやすくなるのか、真相を解説していきます。
なぜ WordPress は SEO に強いと言われるのか
以下は Matt Cutts 氏のプレゼン資料です(翻訳:セオリコ)。
WordPress is a great choice.
WordPress automatically solves a ton of SEO issues.
WordPress takes care of 80-90% of Search Engine Optimization (SEO).WordPress は素晴らしい選択です。
WordCamp San Francisco 2009(※ Google ドキュメントで公開されていましたが削除されたようです)
WordPress は自動的に多くの SEO 問題を解決します。
WordPress は検索エンジン最適化(SEO)の 80 〜 90 % をカバーしています。
「SEO に強い」という表現は見られませんが、尾ひれがついて「Google が認めた」「検索上位に入りやすい」と解釈されるようになったのです。
それは 15 年たった今でも同じで、さらに拡大解釈していたり、事実とは異なることを断言する方も少なくありません。
こうした誤解や拡大解釈は SEO 関連の話題でよくある光景です。
具体的にどこが優れているのか
Matt Cutts 氏が WordPress について語ったこと自体は事実です。
では、「多くの SEO 問題を解決します」とは、具体的にどういうことなのでしょうか。
端的にまとめてみましょう。
- リンク切れが起きにくい
- 各ページで一意の title が生成される
- トップページ – アーカイブページ – 個別ページと階層化される
- ピンバック / トラックバック機能で他サイトとつながりやすい(※)
- RSS 配信でページの更新情報をすばやく検索エンジンに伝えられる
※ 現在はほとんど使用されなくなった機能です
テーマやプラグインでさらに補完できます。
- meta タグを自動生成できる
- 構造化データを自動生成できる
- リンク切れを検知できる
WordPress ブログ初心者が知っておきたい最低限の SEO 対策
これらはすべて「ベタ打ちで HTML サイトを作成する場合との比較」になります。
2009 年当時は、テキストエディターに HTML タグを打ち込み、全ページを手動で作り上げている Web サイトがありました(今でもあると思います)。
ベタ打ちでサイトを作った経験がないと、上記のメリットはピンとこないかもしれません。今では WordPress 以外の CMS やサイト作成ツールでも当たり前のように備わっている機能ですからね。
当時は HTML サイトに比べて優位性があったのは確かですが、現在ではそれほど特筆すべきものではない、ということです。
別の角度から見れば、どのような手段でサイトを作っても「SEO に強い(検索上位に入りやすい)」ということはありません。
WordPress にはデメリットもある
SEO 面でのデメリット
WordPress は、SEO やブログについて知識ゼロの初心者でもそれなりのサイトが作れます。
ただしデメリットもいくつかあり、むしろ検索評価がマイナスになってしまうリスクもあります。
いくつか例をあげてみましょう。
- 内部リンクの完璧な調整ができない
- 不要なアーカイブページが自動生成されてしまう(重複しやすい)
- テーマ・プラグイン制作者の SEO 知識が不足していると影響を受ける
- 古い情報や間違った情報を信じて、誤った施策をしてしまうことがある
ここでは具体的に扱いませんが、もし「SEO に完全に準拠した Web サイト」を構築したいなら WordPress の大改造が必要です。
少なくとも既存の WordPress テーマでは実現できず、サイトの全体的な構成に合わせたテーマをフルスクラッチで作成し、コアもかなりいじる形になります。
高機能・高性能の WordPress 有料テーマを使うメリット・デメリット
だれでもそれなりのサイトが作れる、というのは製品として素晴らしいことだと思います。でも、だれでも検索上位に入れるサイトが作れるわけではありません。
SEO 以外のデメリット
WordPress には SEO 以外のデメリットもあります。
- 度重なる仕様変更に対応しなければならない
- 完全放置で運営できない(各更新など定期的なメンテナンスが必須)
- 記事の更新は簡単でも管理には専門知識が要求される
「プラグインを入れたらエラーが出た」「本体を更新したら動作が不安定になった」というのはよくある話ですよね。
かと言って、本体やプラグインを更新しないまま放置しておくと、ハッキングされてファイルを不正に改ざんされてしまいます。
【事例公開】 WordPress がハッキングされたときの復旧方法
ハッカーは大手有名サイトばかり狙うわけではありません。作ったばかりのサイトや PV 数が少ない個人ブログをも攻撃対象とし、ちょっとしたほころびがあれば侵入してきます。
使い方次第とはなりますが、WordPress は完全無欠のシステムではないという点は覚えておきましょう。
それでも WordPress が使われる理由
2024 年 8 月現在、世界中のサイトのうち 43 % 以上が WordPress で作られています。
Usage Statistics and Market Share of Content Management Systems, August 2024
これほど人気があるのは、以下の理由によるものでしょう。
- まわり(競合サイト)が使っているから
- 基礎知識やカスタマイズなどの情報がたくさんあるから
- WordPress に代わる CMS やサイト作成ツールがないから
「SEO に強いから」という情報が独り歩きしたのも影響していると思いますが、そこを抜きにしても、WordPress に代わる有力な CMS がない、というのが現状です。
優れたシステムはたくさんありますが、情報量や汎用性などを総合的に見ると、やはり WordPress が優位と言えます。
WordPress を使うときの注意点
WordPress を使うとき、最も気をつけてほしいのはセキュリティ面です。
「SEO 以外のデメリット」で取り上げたように、WordPress はシェア数と比例して攻撃される数も増えます。
たとえ PV 数の少ない個人ブログでも関係なく狙われますから、パスワードの強化や定期的なメンテナンスは必ず行ってください。
ハッキングされてマルウェアを仕込まれると、勝手にページを生成されてしまう / 外部サイトにリダイレクトされてしまうなど、SEO 面への影響も出てしまいます。
まとめ
WordPress を使えば、SEO の知識がなくても最低限の施策ができます。
でも、それは「見えない力であなたの記事をブーストさせて、品質を 200 % 向上させる」ということではありません。
検索順位は、コンテンツの中身はもちろんのこと、複数の要素をもとに決められます。まずはユーザーにも検索エンジンにも読みやすい記事を書くことに集中しましょう。
ブログ初心者がオリジナリティの高い良質な記事を書くためのポイント
個人ブログであれば「ブログを楽しむこと」が最も重要だと思います。